インタビュー

河合直樹 書道部部長 「強さ秘めた柔らかさを」

2007.12.16

12月1日、2日の両日、建仁寺西来院・禅居庵で京都大学書道部の第百回記念書展が開催された。寺の落ち着いた雰囲気の中、多種多様な作品が所狭しと展示された。同部は毎年、初夏・晩秋と年2回書展を行っている。今回、第百回の節目をむかえたということで、京大書道部部長の河合直樹さん(総人2回)に話をきいた。(義)

―第百回の書展ということで、なにかいつもと違った取り組みはしたのでしょうか

いつも西来院だけで開催しているのを禅居庵にまで拡大したことや、作品の脇に作者それぞれの写真を貼ったことが挙げられます。写真を貼ったことは親しみのもてる書展となってよかったと部員や来場者のみなさまにも好評で、今後も続けていこうと思っております。

また、これは過去に例がありますが、部員全員での合作「百書繚乱」という寄せ書きのような作品をつくったり、OBの作品を募ったりもしました。

―例年建仁寺で開催しているのにはなにか理由があるのでしょうか。

他の大学の書展もよくここでひらかれており、建仁寺さん側に御理解いただいているという理由もさることながら、私たちが毎年書展を開く季節(初夏と秋季)、あるいは書作品と、建仁寺の環境(静寂な空間・美しい庭園など)の醸し出す風情がとてもよく調和するのです。 また、日本最初の禅寺であり、数多くの重要文化財を有す建仁寺は常に観光客で賑わっており、より多くの方々に書展を見ていただくことができるという理由もあります。

―河合さんは部長として今回の書展に望まれたわけですがどういった苦労がありましたか。

毎年6月の書展が終わった段階で代がわりとなるので、部長としての最初の仕事が今回の第百回書展となり、非常に重い責任を感じました。2回生が少ない上に、うちの部は自由人が多いこともあって、まとめるのは結構大変でしたね。

ただ、今年は1回生がたくさん入ってくれた上に、みんな特別に指導しなくても、来場者対応などをとても礼儀正しくこなしてくれるなど助かりました。パンフレットも部員の助けを得ていいものをつくりあげることができたと思います。

―本格的な作品が多くて驚いたのですが、経験者の方が多いのでしょうか。

いえ、そんなことはないです。半数程の人は大学からはじめます。それでも半年も集中して練習すれば好評をいただけるほどの作品は書けるようになるものです。創作の方が取り組みやすいですが、まずは臨書から始めて腕を磨いていくことが多いですね。

―今回の展覧会の作品製作にはいつごろからとりくんだのでしょうか。

人によりけりですが、前の展覧会(6月)がおわってテスト期間を経て、夏休みに入ってから本格的に取り組む人が多いですね。それまでは臨書をする人は手本となる古典作品を選んだり、創作の人はどんな作品を書くかイメージを固めておきます。書展2ヶ月前には大体の出品状況を把握し、1ヶ月前を締め切りとしています。

―題材選びにも時間をかけるものなのですね。古典作品の中からなにを書くか選ぶ際にはどのようなところに着目するのでしょうか。

古くは殷・周代の作品まで対象となりますので、これは、という作品をみつけるにはなかなか時間がかかりますね。選ぶ基準は様々で、作品の内容自体に惚れこんで選ぶ人もいれば、文字のかたちや流れに惹かれて選ぶ人もいます。私の考え方はどちらかというと後者ですが、前者の考え方も取り入れています。今回書いた顔真卿の詩の一節などは、安史の乱で甥を失った悲しさが込められています。

―他の大学の書道部と比べて、京大書道部ならではの特徴はどういったところでしょうか。

他の大学なら講師の方が指導をきっちりするところが多いのですが、うちは講師の先生をおよびするのが基本的に月1回ということで、学生の自主性が重視されているように思います。指導される機会が少ないのはある意味では短所ともいえますが、私たちはそれを強みと捉え、学生相互の品評なども通して切磋琢磨しています。

また、様々な地域からきた部員たちがそれぞれの感性を引き出すことで、多種多様な書風が共存する書展となっているのもうちのおもしろさだと思います。私は個人的に他の展覧会などにも出展しているのですが、展覧会によって書風がある程度画一化されたりすることもあるので、京大の書展はみていて飽きないものになっていると思います。

―河合さんの作品なども大きな紙に「望」一文字だけ書きあげるなど、独特のものでしたが、ご自身としてはこれからどんな作品を書いていきたいですか。

具体的にだれのどの作品を書きたいというのはないですが、見る人がはっと足をとめ、なかなかそこからはなれられないような、人を惹きつけるものを書きたいですね。パッと見は柔らかな感じがするけれども中に強さを秘めている、そんな作品を書ければ、と思います。

―最後に、書道部として今後どんな書展にしていきたいか、お聞かせください。

先ほど申し上げましたように、私たちの書展は観光客の方々によって支えられている面があります。もちろん全国各地様々な方に私たちの書展を見ていただけるのは大変光栄なことです。しかしそれだけではなく、次回以降の書展も引き続き来てくださる「リピーター」をより得ていくことも書展運営において重要と考えます。 したがって、より多くの方々に書展を知っていただく機会を生むために、広報活動に力を入れていくことが必要であると感じています。

もちろんそうするからには、書に興味を持っていただき、次回以降も見に行きたいと思っていただけるような書展づくりが欠かせません。今回は第百回記念展ということで作品数にもまして平時より高いレベルの作品を展示できたと自負しておりますし、実際来場者の方々からも高い評価をいただいております。書展の更なる発展のために、今回の書展で沸き立った情熱を絶やすことなく、次回以降にもつながるよう努めていきたいものです。

―次回展覧会も楽しみにしています。ありがとうございました。

《本紙に写真掲載》