新たな鉄酸化物SrFeO2合成に成功 未知なる応用の可能性 理学研究科グループら(2007.12.16)

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京都大学理学研究科の陰山洋准教授らの研究グループは、低温での簡単な反応により、平面四配位の鉄酸化物を合成することに成功した。これは従来の化学では考えられない画期的な合成であり、今回の手法と得られた鉄酸化物には様々な応用の可能性が含まれる。また、この研究は、京都大学の理学研究科、人間環境学研究科、化学研究所、財団法人高輝度光科学センター、フランスのレンヌ第一大学、ラウエランジュバン研究所の共同で行われた。この成果は英国科学誌「ネイチャー(Nature)」電子版に12月13日掲載された。

〈日仏共同研究の成果〉

陰山准教授らの研究グループは2003年より低温(300℃程度)反応による新磁性体の開発に取り組んできた。原料物質から高温反応を経て既知物質を作り、そこから低温反応を経て、新物質を作るのが基本的な流れである。低温で反応させることにより、エネルギー消費が少ないことに加えて、高温反応では直接作ることのできない新しい物質を作り出す可能性を持ち、基本骨格を変えないまま部分的な構造の変換が起こることである。

今回合成されたのは、SrFeO2である。低温でSrFeO3から金属ハイドライドを使って還元するという非常に簡易な方法である。現代化学で今回のような異常な配位の物質を作ろうとする場合、有機物を使って複雑な構造となってしまうことが多かった。金属ハイドライドは有機化学ではごく一般的に使用される蒸留の脱水剤である。このような分野の常識にとらわれない発想が今回の成果につながった。

現在、金属資源の高騰が問題となっている。そこで鉄のように地球上に多く存在する元素(ユビキタス元素)をより広範に、効率よく利用することが求められる。中でも鉄酸化物は安価で丈夫であり、磁石や顔料としても多く用いられており、生活の様々な面で用いられている。加えて人体に対しても無害であり、化粧品やドラッグデリバリーにも利用されている。

一般的に鉄酸化物の構造は、鉄原子の周りを酸素原子が立体的に取り囲む構造をしている。金属として現れる機能は、その金属の結合形態によって規定されるため、鉄酸化物の機能は限られていた。これは従来までの鉄酸化物が高温(1000℃以上)での化学反応で得られるものが多かったため、熱力学的に安定な立体的な構造をどうしても取ってしまっていたからである

SrFeO2は、鉄の周りに4つの酸素が配位して、基本骨格をなしている鉄酸化物としては全く新しい構造(平面四配位)をしている。このことから、ユビキタス元素である鉄の新しい利用の可能性が生まれ、資源問題への貢献が期待される。

〈寄せられる期待〉

新たな利用の可能性の第一は超伝導体である。今回得られたSrFeO2は絶縁体である。だが、SrFeO2は、高温超伝導銅酸化物であるSrCuO2と全く同じ構造をしている。このことから、キャリア(電子または正孔)の注入により、超伝導体となる可能性がある。これが成功すれば、鉄酸化物においては初の超伝導の実現となる。

第二に、酸素イオン伝導材料としての可能性がある。SrFeO2の材料となるSrFeO3は酸素欠陥を作り、SrFeO2.5と変化させることができたため、酸素材料としての注目されていた。今回の研究により、酸素の変化量が2倍になった。また、SrFeO2は他の酸素材料に比べて極めて低温(130℃〜)で動作することもあり、効率化、小型化が期待される。

第三には、強力な磁石としての利用である。SrFeO2は、その平面4配位の効果により、磁気的相互作用が従来の鉄に比べ格段に強いことがわかっている。これは単にSrFeO2を磁石として利用するということだけでなく、今回の実験手法を他の鉄酸化物に応用することで、より強力な鉄酸化物磁石を開発することができるという可能性も含んでいる。

陰山氏は、基礎研究者として、応用、実用にすぐに携わるわけではないが、この研究が持っている可能性は大きいものである、と話す。

SrFeO2の合成は、06年7月にインターンシップで陰山研究室に滞在していたセドリック・タッセル(Cedric Tassel)氏によって初めて行われた。彼はレンヌ第一大学の修士課程であり、COEで陰山准教授と知り合った同大学のワーナー・パウルス(Werner Paulus)教授の紹介で日本に来ていた。そういった意味でこの研究は京都大学とレンヌ第一大学との交流から生まれたともいえる。現在も陰山氏が合成を、ワーナー氏が構造解析を担当し、チームワークよく共同研究を続けている。

今回の記者発表は、出張中の陰山准教授がフランスのレンヌ第一大学からに遠隔会議システムを用いて行った。研究成果の発表でこのような形式がとられることは京都大学では初めて。

《本紙に写真・図掲載》

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