〈生協ベストセラー〉櫻田大造『大学教員採用・人事のカラクリ』(中公新書ラクレ)(2011.12.16)

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本書は、主にこれから大学の専任教員を目指す人向けに書かれた、就職活動のハウツー本である。筆者は大学で新学部設置や採用人事に携わってきた、「大学人事のエキスパート」。主に文系の教員に取材し、それぞれのケースに即して大学教員になるためのエッセンスなるものを解説している、らしい。

現在、法人化によって政府からの国立大学運営費交付金は毎年1%ずつ削減されていくことになっており(民主党政権では今のところ削減されず)、少子化により私立大学では定員割れによって大学の存続自体が危うくなるという問題もある。その一方で、1991年からの大学院重点化政策により博士課程院生は大幅に増えている。こういった状況の中で、大学教員の募集が増加しない、あるいは減少しているにも関わらず、博士課程修了者は増え続ける。この結果、博士課程を修了したものの、正規雇用に就職できないという、いわゆる「高学歴ワーキングプア」は深刻な事態になっている。20年、30年前は非常勤講師として数年間働き、その後専任教員として就職するのが一般的だったが、現在はそれが難しくなっている。

そんな中で、どうやってポストを勝ち取るのか。本書は様々な体験談を用いてその戦略を探っている。が、それが役に立つのかは私にはわからない。採用・人事というそれぞれの大学のブラックボックスの中身が、本当に同じなのだろうか。

それはそれとして、本書の一番の読みどころは、時々挿入される著者の愚痴だろう。特に第4章では、「雑務」に押しつぶされる専任教員の姿が、憤慨の念と共に描かれている。大学教員を目指そうという人は、こういうことも念頭に置いていなければならないようだ。

しかし、なぜそんなにまで専任教員の負担が大きいのだろうか。筆者によると、仕事の5割くらいは雑務だという。筆者の言うように、学生や保護者への対応、あるいは不祥事、ハラスメントに大きな配慮が必要になったということもあるだろう。しかしそれと同時に、運営費交付金の削減、学生の減少などに対応するため、専任教員のポストが非常勤講師に振り換えられていることが大きいのではないだろうか。

「高学歴ワーキングプア」の問題は、院生だけの関心事ではない。専任教員にとっても大きな負担になるし、教員に雑務の負担が増えれば、当然研究や学生への指導や教育にも支障をきたす。これは大学全体の問題ではないだろうか。

本書は厳しい時代にいかにして大学教授になるか、という視点から書かれているが、この問題に関心のある方は水野昭道氏の『高学歴ワーキングプア』(光文社新書)などを読んでみてもいいかもしれない。(石)

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