〈企画〉秘境「権現の滝」に迫る ルポ・京都府内の限界集落(2011.11.16)

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「京都に限界集落がある」―きっかけはその一言であった。記者が東北にボランティアに行った際にたまたま一緒に作業した方から聞いた話である。京都に帰ってから、ぜひ限界集落を見てみたいと思いインターネットで調べたところ今回の「さとボラ」に行きついた。記者を含む京都市内に住む京大生は京都に限界集落があることも知らないのではないかと思い、ボランティアと同時に取材も行うことにした。

10月23日に、京丹波町仏主(ほどす)地区で、府の「ふるさとボランティア(さとボラ)」が渓谷道の復旧作業を行った。記者はボランティアとして実際に作業をしつつ、並行して取材を行った。(P)

ルポ・京都府内の限界集落


「さとボラ」は地元と京都府の共同事業であるが、あくまで地域住民が主体となって行っている。今回は同企画の2回目であり、昨年11月にあった1回目の作業では下流地域の復旧を行った。そこで今回は、滝までたどり着けるように渓谷道の整備を行った。

仏主地区は船井郡京丹波町の和知地区にある。面積は約1600ヘクタール。現在18戸26名の農村集落で、20歳以下の住民はおらず、高齢者の割合が50%を超える「限界集落」の定義に当てはまる。仏主の上流には滝があり、滝に至る渓谷道の途中には「権現さん」が祀られている。しかし、ここ数年の台風で、上流の滝やお祀りに行くことが困難になってしまった。高齢化が進んでいるため、住民だけで渓谷道の整備をすることは難しく、そのためにボランティアを募集することとなった。

当日は7時30分京都駅発の送迎バスが出て、私はこれに同乗した。仏主地区へと向かうバスの中で、数人のボランティアの参加者に話を聞いた。京都で育ったという女性は、「故郷に恩返しをしたい」といい、同じような農村集落でのボランティアを行う一環として、今回の「さとボラ」にも参加したと言っていた。

9時30分に現地に到着し、「仏主すこやかセンター」という地域の文化施設の前で説明が行われた。ボランティアの参加者は24名であり、現地の人や行政の人も参加し、50名近くでの活動となった。大学生らしき人が記者を含めて5人ほどおり、40〜60代の方がほとんどであった。そこで京都府立大から来たボランティアの方に話を聞いた。彼女は森林ボランティア系のサークルに所属していて、その紹介で来たとのことであった。

活動は5つの班に分かれて行うこととなった。記者たちは最も高いところ(権現の滝の近く)で作業する1班に所属することになった。

説明が終わると、さらにバスで10分ほどで、長老ヶ岳のふもとにある「七色の木」の近くへ行った。

作業をする渓谷道に辿りついて、1班から順番に山に登っていくことになった。ところが、道というのは整備されているわけではなく、ほとんどけもの道のような荒れた道であった。また、前日の雨によって、地面はかなりぬかるんでいた。岩に打ち込まれた鎖とロープをつかんでいなければ、谷底に落ちて死んでしまう可能性があるほど、危険な場所もあった。

木が道をふさいでいる場合は、チェーンソーで切って進んで行く(下写真)。

チェーンソー
チェンソーによる倒木除去

そうするうちに、滝の見える作業場へとたどり着いた。

記者の班が行った作業は、岩が転がっている登山道を、岩をわきに並べて渓谷道を通りやすくする作業であった。そこまで体力は使わず、危険も伴わない作業であった。これが終わると権現の滝までの道が完成し、一番高いところにいた1班は他の班より先に滝を見ることができた。

そこまで終わった段階で昼食になった。昼食はボランティア参加費の500円に含まれており、現地で撮れた新米を使用し

たおにぎりと、味噌汁であった。外で食べているということもあるが、この時のおにぎりは本当においしかった。

すると、説明会の時点で「山の天気は変わりやすい」と言われていた通り、雨が降り出した。そこまで強い雨ではなかったため、午後の作業も行われることになった。記者たちはカッパを着て作業を再開した。午後の作業は、川の随所に引っかかっている倒木を除去するというものであった。倒木を除去しなければ、いずれはせき止められ、それが決壊すると、災害につながる恐れがある。

川の深さは長靴で入れるほどであり、川に入りながら、川辺に倒木を除去した。木は水を吸っているために重く、ときにはチェーンソーで切ってから運ばれた。午前の作業よりも体力を吸い取られ、着ていたジャージは泥だらけになった。

野菜
販売される野菜

雨も強くなってきたため、すべての倒木が取り除かれたわけではなかったが、あらかじめ決められていた作業終了時刻より少し早く「仏主すこやかセンター」に戻った。ここで現地の方も含めて交流会が行われた。人数が多かったために、3つの班に分けられた。ここでは地元の方たちが作った餅が配られ、野菜(上写真)などとともに販売が行われた。

◆ 地元民との交流 ◆


交流会ではボランティアや限界集落の再生について、記者が思っていた以上に率直な意見交換がなされた。まず、ボランティアについてであるが、作業の安全性をもっと確保してほしいという声があった。確かに少しでも足を踏み外すと谷底に落ちてしまうような場所もあった。また、今回の作業の目的は達成されたが、今後の展望が見えないという意見もあった。実際、権現の滝のところまで上ったのは、数十年ぶりだという人や初めてだという人もいた。使わないのであれば、渓谷道を整備した意味も薄れる。ボランティアを受け入れるからには、地元の人にも意気込みや目的意識が欲しい、という指摘があった。

仏主には、長老ヶ岳、アマゴ釣り、清流、水車等、いろいろな資源があるにも関わらず、それを生かし切れていない。まずは登山道をもっと安全に整備して、登山コースとして観光客を呼び込めないかという意見が出た。これに対しては「ある程度のスリルがあったほうがいい」という意見もあったが、実際に怪我人が出ると問題になる。1回来ればもういいというのではなく、2回、3回と来たいと思えるようなところなら、何か印象に残るようなことが必要という意見もあった。

ボランティアは次回から、郷土料理を体験する班と作業する班に分かれればよいのではないかと言った提案も出ていた。観光客の誘致だけでなく、特産品の販売もやり方がもっとあるという意見が出た。

さまざまな地域振興案が出る中で、ネックになるのはやはり財政と高齢化問題である。渓谷を登るために岩に打ち付けられた鎖がさびているという指摘もあった。さびないステンレスに変えるためには鉄の鎖を使うよりも費用が大きい。そうした細かいところでも行き詰ることが現状である。

富なおいしいものを生かして物品販売をしようとしても、皆高齢で、人手も足りなく、どうしても及び腰になってしまう。また、仏主には食品加工場がなく、比較的若い人もみな仕事があるために手を出せない。

京都市は学生の町であるから、学生の力をもっと利用すべきではないかという意見も出た。実際、起業や社会貢献に興味のある学生は多いが、ほとんどの学生が具体的に行動を起こせずに終わってしまうことも多いように思える。しかしこれほど身近に資源があり、困っている人がいるのなら、それを生かそうとすることも一つのやり方だと思われる。また、健康で時間もある年配の方にもできることは多いであろう。

交流会が終わり、帰りのバスでボランティアの感想を聞くと、基本的にボランティアの目標は達せられ、達成感を得ることができたという方が多かった。しかし、年配の方もいる中で、もっと安全面に配慮する必要があったのではないか、事前にもっと危険な作業であることを周知すべきではないかという声もあった。

また京都府出身の女性は、ボランティアが来ることによって、地元の人も何かしなければという気になることがあると言った。地元の人たちも、集落が消えてしまっていいと思っているわけではないであろう。しかし、外部の人の手を借りなければ地域振興は難しい。

京都府の職員の方は、「さとボラ」の目的は都市と農村の交流のきっかけを作ることにもあると言った。地元住民もボランティアも、このきっかけを無駄にせずに地域振興について考え、行動していくことが重要である。

背景と考察


「限界集落」の定義は、「65歳以上の高齢者が集落人口の50%を超え、冠婚葬祭を始め田役、道役などの社会的共同生活の維持が困難な状態にある集落」を指す。2006年の国土交通省の調査によると、全国の6万2000余りの集落のうち2463が、「今後の消滅可能性」があるとみなされている。実際、これまでに多くの集落が消えていった。

仏主地区がある京丹波町は、2005年に丹波町、瑞穂町、和知町が合併してできた。合併によって、仏主地区のような中心部から離れた地域には、目が行き届きにくくなる。合併すると財政再建が期待できると言われているが、行政のサービスにあまり期待ができなくなってしまったことは地方にとっても打撃となる。全国には同じような農村が多い。

また、地方の再生が難しいのは、やはり財源の不足にある。また、小泉内閣時代の 「三位一体の改革」で地方財政を大きく削減したために、地方自治体の政策選択肢は極度に弱まった。しかし、国の財政にも余裕があるわけではなく、地方主導でまだ埋もれている資源を生かして再生していかなくてはならない。

地方主導といっても、地方は高齢者が多く人手が足りない。そこで、都市部の学生団体やNPO、大学なども積極的に関わって、地域再生の取り組みをする必要がある。大学や学生の多い京都府はまさに都市と農村の交流に適していると言える。現在、府の人口の半分以上が京都市の人口であり、都市部の学生などをいかにして農村部に取り込むかは一つの課題である。また、農産物についても、地産地消では消費しきれないから、「地産都消」によって消費していくことも重要であると言える。

地方再生のためにすべきことは、日本の国土の隅々にまでコンクリートを敷き詰めることではないだろう。それよりも、都市部にはないのどかな生活をありのまま生かすような工夫が必要である。その例として、ボランティアの参加者でありツーリズムを研究されている方は、「民泊」が重要であると言った。民泊には法の障壁などもあるというが、受け入れ態勢が整えば、多くの人が農村の生活を知り、支援していくきっかけとなるかもしれない。

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