〈生協ベストセラー〉瀧本哲史『武器としての決断思考』(星海社新書)(2011.11.01)

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最近、インターネット上で「意識の高い(笑)学生」というのが揶揄の対象になっている。定義は必ずしも明確ではないが、学生団体に所属し、留学に興味があり、起業を考えているといったような、進路に対する意識が高い言動をよくする学生を指している。何故揶揄されるかというと、そういう学生は意識が高くても実績を残していなかったり、自らは個性的だと思っているが結局その姿勢が没個性に陥ったりしているからである。

本書はまさにそうした学生を没個性から啓蒙するかのような内容である。よくあるビジネス書とは違い、「自分で答えを出す」ことに重きを置いている。著者は東大法学部卒、大学院をスキップして助手となるもマッキンゼーに就職し、現在は京大客員准教授兼投資家という超エリートである。

大学の「パンキョー」は大学教授を食わせるためのものでしかなく、本来の意味での「リベラルアーツ」とはほど遠いと主張する著者は『学問のすゝめ』を引用して「実学」が重要だと説く。この実学とは資格の勉強ということではなく、日本社会が泥船であるということに気づき、生き残るための見通しを自分で得るための判断力だと言い換えられる。実用的でない学問が無意味であるわけではなく、知識を得たところで社会に出ていかせなければ意味がないということなのである。

「誰とでも交換可能な人材を『コモディティ人材』と呼びます」といい、専門知識があるだけの「エキスパート」の価値は暴落するという。それに対して市場において交換不可能な人間になるためには①専門的な知識・経験に加えて、横断的な知識・経験を持っている②それらをもとに、相手のニーズに合ったものを提供できるという二つの条件を持ち合わせた「プロフェッショナル」になる必要があるという。

では具体的に、プロフェッショナルになるための思考法はどのようなものであるか。それはディベートにおける思考法に近く、その内容を解説するのが本書の中心である。「論題は二者択一になるぐらい具体的なものを選ぶ」などといったように、結論を出すことに重きを置く。「結論が出ないものは、雑談であって議論ではない」というのは、一見当たり前には聞こえるが、結論のない「議論」と称されるものを普段よくするという人は筆者を含めて多いであろう。本書はもともと自分の判断で物事を考える癖のある人にとっては、少し物足りないかもしれない。とはいえども、ディベートの方法論は初めて知ることが多く、一読の価値はある。

本書は発売1か月もたたないうちに10万部を超えた、ベストセラーである。勝手ながら筆者が心配に思うのは、この本を読んで、活用しきれる人がどれだけいるのだろうかということだ。大企業に手当たり次第にESを出している就活生が、「『武器決』読みました、とても参考になりました!」なんて著者につぶやいたら、「意識の高い(笑)学生」の誹りを免れないのか、などと思ってしまう。そんな学生は実在しないのかもしれないが。(P)

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