春秋講義 超高齢化社会の中で生きるために(2011.10.16)

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京大内外の人々に向け大学の学術研究について発信する「春秋講義」の秋季講義が、10月3日より開かれている。今季のテーマは「少子高齢化」。3日に時計台記念館百周年記念ホールで行われた。第一回月曜講義では、医学研究科の野本愼一教授が「きらめく超高齢社会に向かって」と題し、超高齢社会への一途をたどる日本の展望を、医療問題をはじめ様々な論点から語った。

一般に、総人口に占める65歳以上の高齢人口比率が21%を超えると「超高齢社会」とされるが、日本は2005年時点で20%、2020年時点での予測比率は28%と報告されている。この間に高齢人口は900万人増加するが、65歳から74歳の年齢層にあたる人口はむしろ減少し、75歳以上の年齢層が急激に増加するという。これは元気な高齢者が減る一方で、病気がち、あるいは自活に不安のある高齢者が増えることを意味する。

こうした状況を背景として、国民医療費が膨れ上がるのはもちろん、救急医療に対するニーズが必要以上に増してしまうなど、医療そのものを圧迫する恐れもあると野本教授は指摘する。日本の現行制度はこうした医療の圧迫に対応できていないばかりか、医療行為者の開業条件を法律によって過度に制限することで、それに拍車をかけてさえいる。医療行為の門戸拡大には慎重な議論が必要かもしれないが、少なくとも現在の医療職の権限を拡げ、総合医を育成していくことをこれから検討していく必要があると話す。

また、ますます複雑化しつつある制度を前にして高齢者が対処しかねることのないように、長寿社会におけるいわば「コンシェルジュ」的な存在が欠かせない、と野本教授は述べる。資産、法律、介護に関する様々な問題を、高齢者が不安なく解消するための窓口役が今の社会には欠けている。個人情報などの課題も多いが、家族、地域が一丸となって、本当に援助が必要な高齢者が気兼ねなく支援を受けることのできる社会、長生きを喜べる社会づくりが今求められている、と語った。

野本教授は講義の後半で、現代では延命治療の末の病院死が当たり前になっているあまり、「自然な死」についての意識が希薄になっていると話した。医療中心の「病院完結型医療」から生活中心の「地域完結型医療」へのパラダイムシフトを図りつつ、死に対する忌避などといった従来の死生観も含めて「長生き」のあり方を見直していくべきだと述べ、講義を締めくくった。

《本紙に写真掲載》

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