〈新刊書評〉小出裕章『原発のウソ』(扶桑社新書)(2011.07.01)

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3月11日、東北地方太平洋沖地震とそれに伴って福島第一原発における一連の事故が起こり、現在も継続している。震災での死者・行方不明者の数は2万人を超え、現在も避難生活を送る人々が多数存在する一方、福島第一原発では緊迫した状況が続いている。

本書は、この原発事故を受けて行った講演やインタビューをもとに、京都大学原子炉実験所の小出裕章助教が政府や東京電力の発表、マスメディアの報道に潜む嘘を暴いていく、という内容だ。

小出氏は日本に原発が建設され始めた当初からその危険性を指摘し、1973年から2000年まで続いた伊方原発訴訟、1999年のJCO臨界事故などで、原発のある地元住民の立場に立って40年あまり反対活動を行ってきた。本書では今回の福島第一原発での事故が今後どう進展するのかということだけでなく、その背後にあるずさんな管理体制や、原発産業の構造的な問題、原発に関する様々なイメージ操作について解説する。

例えば、原発推進の理由として「火力発電所と異なり、原子力発電所は二酸化炭素を排出しない」というキャッチフレーズと唱えられてきた。原発は「クリーン」なエネルギーだというわけだ。しかし、本当にそうなのだろうか。小出氏によると、原発は二酸化炭素を出す。確かに「発電時」そのときには二酸化炭素を排出しないが、原子力発電の燃料となるウランの採掘、製錬、加工には大量の燃料が必要である。発電所自体も巨大なコンクリートと鋼鉄の塊であり、まずその資材も二酸化炭素を出しながらでなければ作ることができず、建設そのものも同様だ。さらに、原子力発電所は発電時には二酸化炭素を排出しない代わりに、それよりはるかに直接的に有害な核分裂生成物、いわゆる「死の灰」を生み出す。これが果たして、「クリーン」なエネルギーなのだろうか。

この他にも、プルサーマル計画やそれにまつわる再処理工場の課題や、「想定外」の事態を考えない安全対策の甘さなど、原子力にまつわる嘘と問題を紹介し、小出氏は「脱原発」を主張する。同氏によると、日本国内の原子力発電所の稼働率が70%なのに対して、火力発電所のそれは約50%しかなく、仮に原発をすべて止めても、火力発電を70%まで引き上げれば問題ないという。今回の事故で計画停電や節電が必要になったのは、地震などによる火力発電所の被害に原因があるのだという。

しかし、小出氏の主張は一面的な真実でしかない。これを鵜呑みにしてしまっては、「原発は安全だ」と楽観的に今まで言ってきた、日本の電力事業関係者と同じである。慎重に慎重を期して、しかし悲観的になって「自然に帰れ」などと自暴自棄に走らないように、真面目に考えていくべきではないだろうか。(書)

《本紙に写真掲載》

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