電子化は知のあり方をどう変えるか 春秋・月曜講義(2010.11.01)

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「電子書籍と出版」をテーマに行われた2010年度秋季の春秋講義。10月16日に行われた第2回講義では、古賀崇・附属図書館准教授が「電子化の中の大学図書館」と題して、研究活動における電子化の流れと、その中での大学図書館の取り組み、京大図書館としての今後の展望について語った。

古賀氏はまず、学術雑誌の電子化により激しい変化に直面する大学図書館の役割とその課題について指摘。「論文主義」とも揶揄されるほど今日では研究成果として重要視される学術論文は、次第に電子ジャーナルに収められるようになりつつある。研究者にとって、これは論文を入手するのに図書館に行かずに済んでしまう状況が生じていることを意味する。これにより、図書館がかつて有していた、モノとしての図書を買う「購読」の役割は、アクセスの権限を買う「契約」の役割に移行しているという。

しかし、学術出版界において出版社の寡占化が進行している以上、「契約」に移行しようとも価格上の問題は常に存在する。実際、価格の高騰に耐えきれず、図書館が契約を断念するケース(シリアル・クライシス)もある。その結果、購買力のある大学とそうでない大学の間に格差が生じつつあるという。

このような状況下で、新たな研究成果の流通ルートが望まれるようになった。そこで着目されたのが、研究者や研究機関が自らの研究成果を無料で公開する「機関リポジトリ」の運用だった。これはいわばウェブ上の電子書庫であり、図書館が中心となって運営されていることが多い。大学図書館が主体となる電子化活動は、従来は歴史的資料などの貴重図書のデジタル化にとどまっていたが、近年はオープンアクセスへの流れもあり、機関リポジトリを通じた研究成果の発信に傾くようになったという。

古賀氏はここで、京大のリポジトリ「KURENAI」を紹介。「KURENAI」では、紀要論文や雑誌論文はもちろん、益川敏英氏のノーベル賞受賞論文や、山中伸弥・京大教授のiPS細胞研究論文なども閲覧することができる。古賀氏はリポジトリが一般社会にもたらす利点として、ビジネスへの着想や、説明責任の高まりに応ずる大学の活動の可視化を挙げ、ひいてはウェブによる「ソーシャルな」結びつきをも期待できると述べた。

講義の終わりに、古賀氏は電子化の未来と京大図書館としての目標にも言及。「電子図書館」において書物は解体され、必要な部分だけが利用されるようになり、利用者の観点に沿う形でのアクセスが可能になるべきだとする長尾真・国立国会図書館長(京大第23代総長)の考えに対し疑問を呈した上で、知識にしても書物にしても、その全体像が理解されるべきではないのだろうかと主張。京大図書館としては今後、学部や部局との連携を強化する中で、機関リポジトリを一層促進し、また学内における情報リテラシーの向上にもつとめていきたいと述べ、講義を結んだ。

なお、古賀氏は今回の講義資料を前述の「KURENAI」で公開している(http://hdl.handle.net/2433/128876)。

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