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京大に労基署指導 三六協定改定、「働かせ過ぎ」の改善に応じる

2010.05.21

3月24日付で京都上労働基準監督署は京都大学に三六協定の特別条項の適用について改善を求める指導をした。京都大学は4月15日付で指導を受け入れ改善するという趣旨の報告を同労基署に提出した。

京都大学では昨年12月16日付で三六協定が改定され、特別条項が10ヶ月まで適用された。その結果4月までで、19名の従業員が特別条項6ヶ月以上の適用を受けていた。うち14名が医師から「健康を害する恐れがある」との警告を受けた。

今年の1月1日付で宇仁宏幸・経済学研究科教授が過半数代表者に就任し、同月7日付で松本総長宛に特別条項の10ヶ月までの適用は法令違反であると、三六協定の再改定を求める申し入れ書を提出した。しかし反応が無かったため19日付で労基署に告発をした。

この告発の後、2月の上旬に監督官が来学し、大学当局側に資料の提出要請をし、結果24日付けで労基署から①三六協定の特別条項において、1年の半分を超える適用を定めるべきではない。②特別条項の適用は、真に臨時的な業務に限るべきであり、安易に適用するべきでない。③時間外労働の具体的な削減対策を求める。という趣旨の指導が京大当局に対して下された。

この間3月30日に今年度4月から9月までの三六協定の締結交渉が行なわれていたが、大学当局側は当初改定交渉の席で「数年間の期間で見ると10ヶ月の特別条項適用は臨時的であるといえる」と主張していたという。しかし労基署から指導を受けてからはそうした主張は無くなり、結果締結された今年度前期の三六協定では時間外勤務特別条項の適用は6ヶ月までに戻った。また時間外勤務をさせる必要のある具体的事由も、それまでの「業務処理期限のひっ迫」「施行期限のひっ迫」から「臨時的事由による業務処理期限のひっ迫」「臨時的事由による施行期限のひっ迫」と改められた。

宇仁氏は「大学には今回の事態を真摯に反省して、今後この指導に完全に従い法規制を遵守して労働時間管理を行なって欲しい」と語った。

京大職員課は今回の指導を「真摯に受け止めており、改善策を報告した」とコメントしている。

三六協定

労働基準法では、原則として使用者は労働者を週40時間以上働かせてはならない。ただし同法第36条では、労使の双方が協定を結ぶことで一定の超過時間勤務が可能になる、と定めている。これをいわゆる三六協定と呼ぶ。

ただし三六協定で特別に認められた延長労働時間(月45時間を越える超過勤務)は、法令上あくまで臨時的業務に当てられるものと規定されており、協定が適用される適用月数も年6回以下と規定されている。

国立大学の教職員は2004年の法人化以後非公務員化されたことで労務に国家公務員法の適用が外れ、労働基準法が適用されるようになった。事業場において雇用者の過半数を組織する労働組合が存在する場合は、当該組合が従業員を代表する立場から協定を結ぶが、さらに京大のように労組が過半数従業員を組織していない場合は、雇用者の中から過半数代表者を選出しこの代表者が使用者と三六協定を結ぶことになっている。