〈生協ベストセラー〉 川口葉子著『京都カフェ散歩』(祥伝社)(2010.05.16)

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「京都は街自体が一軒の巨大なカフェだ」ということばではじまる本書に収められた67ものカフェの情報はそれだけで京都という街の重層性を表しているように思う。学生への優しさ、観光客との距離感、伝統と革新の共存。京都の街に感じる諸々の感覚。京都の紹介本は毎年、膨大な数出版される。4月のランキングには往々にしてその類の本が並ぶのだが、本書はその中でも目をひく特徴を備えているように思われる。

京都を「喫茶都市」と言う著者は、ウェブサイト「東京カフェマニア」を運営し、年間何百件ものカフェを紹介している川口葉子さん。本書内でのプロフィールによると約30年にわたり1000軒以上のカフェを訪れてきたという。単なる形式的な店舗紹介ではなく幾多のカフェを渡り歩いてきた著者だからこその適度な雑感を交えたカフェ紹介は単に「現在」の各店舗の在りようをうつすだけでなく、それぞれの連関の中で京都という街の中でのカフェという場所の役割とその移り変わりを映し出している。その意味で単なるガイドではなくて、エッセイであり、かつ、ちょっとした歴史の本でもある。

豊富な取材量が垣間見られる豆知識も含めた紹介が肝。例えば京大に程近い進々堂については、初代店主が内村鑑三の門下生でありフランスへの留学でパンづくりの技術を身に付け、セーヌ川左岸のようなカフェ文化を再現したいと店をはじめたこと、大テーブルが人間国宝・黒田辰秋氏の無名時代の作品であることなど東京住まいとは思えない深みのある情報が散りばめられている。

京都のカフェファンにはたまらない六曜社地下店(京都市中京区)のマスター・奥野修氏とオオヤコーヒー焙煎所のオオヤミノル氏の対談も収められていて、京都にとってのカフェの存在や焙煎の仕方についてざっくばらんに語らっている。

新入生は寺社仏閣だけではない京都文化の体感に、在学生は行きなれたカフェ・喫茶店の魅力の再発見に、本書片手に日曜の昼下がり、ぶらぶらしてみてはいかがでしょうか。(義)

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