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京大サロントーク「宇宙機の軌道設計の極意」

2010.04.30

4月14日、百周年時計台記念館(京大サロン)にて、第58回京大サロントーク「宇宙機の軌道設計の極意」が山川宏・生存圏研究所を講師に招いて行われた。人工衛星や探査機の打ち上げ時の話を中心に語られ、参加者は熱心に耳を傾けていた。

京大サロントークは京都大学の教職員等により行われている。リレー方式で各学問分野の専門家が最先端の学術研究の成果にまつわる話題を分かり易く語り、異分野学問領域間の交流を深めるのを目的としている。この日の講師である山川氏は宇宙機(人工衛星や有人宇宙船)の打ち上げに携わっている。

この日中心となった話題は、まさにその宇宙機の航行時の軌道設計についてである。宇宙空間上にはあらゆる引力が相互に作用しており、宇宙機を打ち上げる際にはその引力の影響を考慮する必要がある。いかに効率良く、最短距離で航行させられるかがミッション成功のための重要なポイントの一つである。山川氏が例として挙げたのが、1998年から2004年の間火星探査機として活躍した「のぞみ」である。火星は地球よりも大きな公転軌道を描いているため、「のぞみ」の探査計画にも軌道設計の手法が用いられた。地球から火星まで探査機を打ち上げるには、出発時に地球の位置と到着時の火星の位置が太陽に対して反対側にある時に最も少ない燃料で効率よく行けることが知られている。その機会は天体軌道の位置関係からほぼ2年に1回である。更に、月の重力を利用して地球脱出時に軌道を曲げることで燃料削減が図られている。こうした工夫により「のぞみ」による火星探査が進められたのだ。軌道についての話題の他には、スペースデブリと呼ばれる人工物の宇宙ゴミが衛星軌道上を漂っており、衛星との衝突を避けるための対策が行われている話も紹介された。

最後に質問コーナーの時間が設けられ、活発な議論が行われた。質問の内容は惑星探査機の名前の決め方といった気軽なものから、昨今の事業仕分けの話にまで渡った。この日参加した情報学研究科修士2回の学生に話を聞くと、「地球に小惑星が衝突するのを避けるために宇宙機を衝突させて小惑星の軌道を変える話が興味深かった。事業仕分けで科研費の在り方が議論されている現在だからこそ、専門外の人に自分の研究を広報していく努力が必要だと改めて感じた」と語った。